路地裏散歩

特撮とかアニメとか感想と犬。

4話『人は人を愛すると弱くなる』

やられた…。半ば予想してたこととはいえ、相当にやられた…!


前回、どちらが本物か解らないほど巧妙にユキに擬態したワームの恐ろしさが、今回で際立ちます。突然加賀美の前に現れた、2年前に失踪した弟・亮は、ワームが擬態した姿だったと。亮に擬態していたワームがあれだけ自我を持っていることを考えると、ワームは相当知性を持って、人間社会の中に入り込んでいるんですね。
アバンタイトル、そしてSalleの厨房でのシーンで、加賀美の姿が鏡面に映った虚像をメインに映っている画面があるのが印象的。そこに同じ姿があっても、記憶や感情があっても、虚像は虚像でしかないということでしょうか。


加賀美がゼクトに入った理由は、弟がワームに殺されたんじゃないかという疑惑があったからなんですね。弟の失踪の真相を知りたい、ということであれば、父親としても反対はしきれなかったんじゃないかと。その割に加賀美の扱いが中途半端なのは、親心というやつなんでしょうか。20人以上も一度に殺されてしまったり、仲間を撃ったり撃たれたりする可能性もある仕事だし。


この話で、天道と加賀美はようやく向かい合ったんだろうな。今まではどちらかといえば天道は加賀美を(多分)気に入りつつも己の目的のための一手段という風に目している部分が大きくて、加賀美はそれを嫌がりつつゼクトの一員として「天道は守るべき一般人」という感覚を拭えないでいた部分があるのではないかと。今までの2人には、ゼクト対『ヒーロー』、組織対非組織という、属性対属性みたいな部分が少なからずあったと思うんですね。
それが今回、人対人、加賀美対天道という個人対個人の関係になった。それは、弟の顔をしたワームを倒せなかった加賀美が、それを成し遂げた天道を『越えてやる』と言ったのに端的に現れているなと思いました。組織対非組織であったとき、相手は(カブトの力を持っていて、自分より強い存在ではあるのだけれども)『護るべき存在』で、自分が越えねばならないような相手ではなかったんですね。それが天道という個人を見、また自分と対比してみたことで、天道が(今のところ)自分の先を行く存在だということを見せ付けられ、自覚したと。
ワームを殺してくれと叫ぶ時の「カブト!頼む!」が、最後には「天道、俺はお前を超えてみせる」と名前で呼んでいたのが象徴的だったな〜と。


加賀美は今回本当に悔しかったと思うんですよ。自分が目指していた弟の調査からは外され、一度は生きていたと思った弟も本当は殺されていて、擬態したワームにむざむざと欺かれ、せめて自分で弟の仇を討とうとしてもままならず、無力感で一杯だったでしょう。今の加賀美の行動の動機がことごとく否定されてるんですから。
そこに「俺は必ずお前を超える」という言葉があり、天道からは加賀美にとっての約束の象徴であるボールが投げ返されているわけですよ。一度否定されきった加賀美が、新たな立ち位置を見つけた瞬間だったと思います。(『加賀美が新たに』って洒落じゃないんですけど/笑)


いやもう、天道と加賀美だけで相当盛り上がっちゃって、他の部分がなおざりですが。


樹花は、兄が相当に「俺様」な性格なのは解ってて、なおかつそれはそれで崇拝しつつ周囲の人間にはそれをフォローできるという、年齢と言動から受ける印象よりもちょっと大人びた精神構造の子みたいですね。一面、兄を子供のように心配している所もありそう。加賀美にもう一度遊びに来させる約束をしてるあたり。
そして樹花も「おばあちゃん」の洗礼を見事に受けていたのね。顔よりも性格よりもなによりもその物言いで兄妹の証明ができるって、なかなかないぞ?


そして雨の中のクロックアップが、ものすごくカッコよかった!単に水滴が空中で止まってるだけでなく、ワームやカブトが当ったところは、水が弾けてるのね。細かい…!
さらに、決着がついた後に流れ出す雨が、カブトの流す涙に見えました。
カブト…というか天道は、加賀美に弟に擬態したワームを殺すか殺さないかの選択を突きつけた訳ですが、これは更に『これから先、誰かが加賀美自身のように悲しんでも、擬態したワームを殺せるのか』という覚悟を突きつけたんですね。当然、その問いは天道自身に跳ね返ってくるわけです。天道自身の覚悟としては当然それを乗り越えているんだろうけれども、そこに感情の揺れがない筈もなく、天道自身の苦しみを『天』が泣く雨が代弁したんだろうな。やばいですよ。やられましたよ。うわぁ。


今回は、映像面での演出が実に良かったです。前出の「鏡に映る虚像」とか、ラストの雨を含めて、映像がちゃんと内容の補填になってる。
この雨は、天道の行く先に漂い始めた暗雲でもあるわけですね。


そして岬は天道を突き止めた模様。来週は沢木さん…もとい津上さん…じゃなくて、南さんでも黒岩さんでもないあの人が登場。やっぱり、あまり髪は長すぎないほうが似合うな。
それにしても次回は『カブトを捕獲するんですよ!』なのか。(笑)