路地裏散歩

特撮とかアニメとか感想と犬。

#48 フィナーレ キバを継ぐ者・

 とりあえず総括すると、良い最終回だった!勢いもダレがなかったし、親から子への連鎖、世代の交代と前進にも言及してたし、最後のお祭り的ライダー大集合は無条件で燃えた!そしてこの盛り上がったテンションのまま平成ライダー10周年記念のディケイドに繋ぐ、と。いやもう、ほんと一年間見続けてきて良かった。


■渡
 いやうん、裏があるのは解ってた。解ってたんだが、そこまでストレートかつ、ぶっちゃけ小さく、個人的な「お兄ちゃんを守る」って方向だとは全然思ってなかった。


 ファンガイアと人間の架け橋になりたい、という渡の思いには揺るぎは無いはず。で、まずはその一歩として、システムを変えるのではなく、現状で人間とファンガイアの狭間に落っこちかけていた太牙を救おうとしたんでしょうね。その意味で、このときの太牙は渡にとっての世界(人間とファンガイアの狭間)の象徴だったのかな。深央さんと状況は違うけれども、太牙を救うことで深央さんを助けられなかった無念も晴らしたいと思ったりしたのかもしれないけども。もちろん、ゆくゆくはシステムそのものも変えなくちゃいけないんだけども、それはファンガイアである太牙に託したのか。
 人間が喰われたくないからといって、人間の側(渡含む)から「共生する為に人を喰うな」と言うことは、人間がファンガイアをコントロールしようという意味において「支配」であって「共生」ではない、んだと思うんですよね。なのでファンガイアの自主性で人間を喰わなくなる為に、システムはファンガイア側から変えられるのが自然なんだよな、と。


 人間とファンガイアという二つの種族の物語が渡と太牙の兄弟に収束していくのだとすると、二人の和解はファンガイアという人喰いの種族(これ自体が悪いというのではなく、人間の天敵という意味で)を人間が愛し、ファンガイアがそれに応えて手を取るという形になるかと。これまで散々「人間を愛した罪」で処刑されたり、悲劇的な結末を迎えたファンガイアを描写してきたことを踏まえると、捕食者が被捕食者に「愛されたことで共存への道が開けた」とも言える訳で、やっぱりテーマは「愛だろ、愛愛愛!」かな〜と思ってみたりします。
 あと、渡と太牙の兄弟って、「キングの力以外の全てを持っている者」と「キングの力以外なにも持たぬ者」だったんだよね。その二人が共に生きるというのは、ある意味で真のキングが誕生した、そしてそれは人間とファンガイアの連立政権だったってのが、共存を象徴しているのかな〜と。


■「兄さんの罪は僕の罪だ。一緒に背負うよ、僕も」
 今回の白眉はこのセリフだと思う。


 そもそも太牙の犯した罪は何かって話なんですが。細かいことは色々あるにせよ、大まかには人喰いのことと、人類に進化をもたらす人間を処刑してきたことなんだろうな。人喰いについての描写は無かったですが、むしろこのセリフで、太牙がやっぱり人のライフエナジーを喰って生きてたのが明らかになったっつーか。処刑の件については、なんつーか明らか過ぎるくらいに明らかなんで置いといて、人喰いの件。
 もちろんファンガイアである太牙にとっては人喰いは食事な訳だから、罪と断じられるようなことではなかったはず。ところが人間と手を取り合っていこう、という決断をした時点でこれは罪になっちゃうんですよ。「人間もファンガイアも同じ」と言ってしまえば、ファンガイアの人間喰いは同属殺しだから。なので太牙は、渡と手を取った時点で今まで喰ってきた人間の分だけ罪を背負ったことになり、それは人間を喰ったことのない渡には救えない「罪」ではあるんですよね。
 これは渡だって同じこと。人間とファンガイアが手を取るなら、今までファンガイアを殺してきた渡だって罪を抱えることになる。だから「兄さんの罪は僕の罪だ」というのは、言ってみれば厳然たる事実。


 でも、この罪を背負ってなお、人間とファンガイアの融和に向かおうとする渡の決意が「一緒に背負うよ、僕も」なんですよね。誰だって「罪」と名のつくものなんか背負いたくない、それでも、という渡の決意がぐっと来る。しかも、背負う罪はこれから更に増える可能性があるわけだしね。静かだけど熱くていいセリフだと思った。
 だからこそ、「ファンガイアとの融和など考えず、今までどおりファンガイアを倒して行く」道も考えられるのにも関わらず、罪を背負ってまでファンガイアとの融和を願う渡に太牙は「デカくなったな」と返すわけだ。いいなぁ、たまらんなぁ。


■太牙
 あんたって子はぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!


 真夜を殺すどころか、刺してもいねぇ!それでも「母さんを殺した」と言っちゃうのは、それだけ本気で渡に掛かって来いって事だし、つまりそれは渡にきちんと向き合って欲しいということでもあり、キングの座だけは絶対に渡さないという意思でもあると。もう、この子は最初っから最後まで愛を求め続けていた子だったな。最後に報われてほんと良かったよ…!もっとも、報われたのも自分自身が真夜や渡や嶋さんを愛していたから、なんだよね。まさに情けは人のためならず。頑張ってれば良いことあるんだよ。ちゃんと報われるようにできてるんだよ。そういうメッセージが、なんか優しい。


 キバットバット2世が太牙を選んだのは、結局真夜を傷つけなかったからか。2世はどんだけ真夜大好きですか!うん、確かにそれなら真夜にした仕打ちが気に食わずに先代を裏切り、真夜を殺せなかった太牙に力を貸すってのは凄く納得。
 それにしても太牙の孤独ってどんだけよ。真夜をどれだけ憎んで激情に駆られていたとしても、真夜を喪うことには耐えられなかったんだよ、きっと。その分、これから愛される幸せを知るといいよ。キング自ら人間との融和政策を打ち出してるんだから、真夜ももう隠れ住まなくてもいいはずだしな!


 そして社長再任!あの偉そうだった役員達のおどおどした態度を見るに、再任にあたって何やったんだって感じなんですが(笑) 正統なキングの力を持ち、キバと和解し、しかもダークキバの鎧まで手に入れて戻ってきたってことで、前回の仕打ちからして復讐されるんじゃないかとビビってるんでしょうかね。太牙がそれをするしないに関わらず。それを意にも介さない太牙の態度は、力があるから余裕を持ってる、というようにも見えるし、「力の掟」そのものから決別しようとしてるようにも見えるな。


 ライフエナジーに替わるエネルギーの開発かぁ。できるんだ!? それが一番びっくり。つーかまあ、そもそも深央ちゃん辺りは(DVD6巻の未公開映像見たりすると)人間の食べ物を食べて生きてたんだろうし、エネルギーとは言いつつ、非常に高効率の機能食品みたいなものになるのかな。濃度や調合を調節すれば、人間用の高機能品として転用もできるかもね。
 これが実現すれば、少なくとも絶対的な捕食者とエサという関係からは一応逃れられるのか。人間に好意を持ってたり、人を襲えない気弱なファンガイアには朗報でしょうね。
 ただ問題は、人間を襲いたい(というと語弊があるけど、今までの食性にこだわりがある)ファンガイアの存在。融和政策を推し進める以上はこういうファンガイアは粛清なり処罰なりせざるを得ないのだろうし、場合によっては渡がキバになって倒したりもしないとならないかもしれない。それはやっぱり同属殺しであって罪を背負うことになるんだよね。渡も太牙も。「一緒に背負うよ、僕も」ってのはそういう意味でも重い決意な訳だ。
 ところで時間軸的には前後するんだけども、「もう一度戦おう」「一緒にな」ってのは、これから先の二人の戦いにも掛かってるんだと思います。ファンガイアと人間の間にある溝を埋めようなんて大事業は、これから延々と続く形の違う戦いなんだろうな、やっぱり。


■父越え
 渡は、父が対立するしかできなかったキング(ファンガイア)との和解を果たし、太牙は愛を得た事で父を越えたのかな、と思う。


■音也の腕
 音也ー!意味ありげに沈んで行ってたのは、イクサの腕だったか。そしてそういう風に関わってきたか!これはもう理屈抜きで燃えざるを得ない。渡がつまずいていたら助けてやって欲しい、と頼んだ人間自身が、結局渡を助けてる。そしてお前を思う心はいつでもお前と共にある、と。うわー、ダメだ。キバはホントに親子の物語をキッチリ完結してくれたよ!
 そしてこの前後、ある意味抜け殻であるそれぞれの父に助けられる渡、と、痛めつけられる太牙、という対比が非常に象徴的。


■嶋さん
 若干説明セリフ過ぎるんだけど、渡の思考回路もちょっとぶっ飛んでるから解りやすく翻訳してくれる人がいないとね!そしてここで太牙の優しさを認め、太牙に道を示すことで、ようやく嶋さんは太牙の「父親」になれたんだと思う。
 そして、ここに居るのはやっぱり嶋さんじゃなきゃダメだったんだろうね。かつては嶋さん自身が人間とファンガイアの架け橋になろうとして太牙を育て、それに挫折しちゃってた。だからこそ、互いを認め合った場所に嶋さんがいることで、嶋さんの世代では上手く行かなかったことが子世代で上手く行った、つーのが引き立つわけだから。


■名護さんと恵
 戦意喪失した名護さんを叱咤して、救い上げたのは恵だったよ!「逃げてるだけよ!」ってのは、一年通して(映画とか一時的にはイクサを装着したにせよ)生身で戦い続けた恵が言うからこそ説得力がある。そしてそうやって戦ってきたからこそ、戦士としての名護さんを尊敬していたという部分にも気付けたんだろうし。特訓を経て、ビショップとの再戦には燃えた!まさに、夫婦初めての共同作業!


 名護さんの目があっさり治ったのはまあお約束っちゃお約束なので、余り突っ込むところじゃないですが。あれはきっと精神的な曇りが晴れたって感じかな、と思った。そして晴れた視界に映るのは恵、と。フォーリンラブ間違いなしのベッタベタの場面だよ!あの、縋るような抱き締め方まで名護さんは最高です!そして「ばーか」という恵のセリフも最高です!


現状の「完璧じゃない自分」を認めて、それをカバーするような戦い方が(恵と共に)できたら、そのときこそ名護さんは弱さを克服して、過去の自分に決着をつけられる……んじゃないかな?

 こんな事を書いたんですが、他者への尊敬や愛を知った名護さんは、これでホントに正義の味方になったんだと思う。これからは恵と共に新しい人生を歩むといいよ!
 それにしても、数日で電撃結婚ってのは笑った。えー。絶対「そして一年後」だと思ったのに!(笑) 


 そしてゆりと恵のシーンは、短いけど泣けた。恵はゆりの遺志を継いだとはいってたけど、ゆりの本当の願いはこれだったんじゃないかな。
 そしてなぜ花嫁の父役が嶋さんなのかを小一時間問い詰めたい。(笑)


■ビショップvsイクサ
 もう、最初から最後までカッコよすぎて堪らない!角度が対称の変身シーンといい、一進一退で息詰まるバトルといい!「その命、神に返しなさい」のセリフがこんなに痺れたのは初めてだ!
 ビショップと名護さんは、なんか久し振りにライバルといえるライバル関係だった気がするよ。やっぱり好敵手ってのは燃えるんだよ、無条件で!
 そういう意味では、最近このライバル関係ってのはなかなかなかった気がするね。ライダーの立ち位置が複雑になってきて、且つ、善であり悪である部分が明確でないのが続いた感じだったから。(もちろん良い悪いじゃないけど) ああ、すっげーカッコよかった!


■ビショップ、過去キング
 ファンガイアの掟に殉じた二人の死は、言ってみればある種の悲劇だよね。二人ともファンガイアの掟的に正しいことをしようとしただけ。まあ、ビショップ辺りは、最期の方は太牙への私怨で動いていたような気もするけど。
 ただ、一番の悲劇は「掟は掟である」という画一化した思考から抜け出せなかったところなんだと思う。掟なんて言い方はかなり運命的で強固ではあるけど、それを定めた存在なり意思があったはず。その掟はなぜ必要なのか、なぜ守らねばならないのか。そしてその掟は今を生きて行く上で理にかなっているのか。それを随時検証せず、ただひたすらに遵守しようとしたそれこそが悲劇の発祥だったのかもしれない。
 過去キングは掟に捉われず、もっと早く真夜に愛を告げていればよかったのかもしれない。ビショップも掟に捉われずにファンガイア全体の繁栄を見据えて、太牙を利用するなり擁するなりすれば、ファンガイア的に上手く回ったかもしれない。
 そういう意味では、敵ではあったけれども哀しい存在だと思うし、報われて欲しかったとも思う。せめて真夜と太牙はこの二人の事を忘れないでいてやって欲しいな。


■バトル
 盛りだくさん過ぎていちいち書けねーよ!ということでかいつまんで。
・ザンバッドソードアクションがどんどんカッコよくなってる。円陣のなかでシャキーン→ファンガイア砕破の流れは神。
・復活バットファンガイアつえー!
・エンペラーとダークキバのシンクロバトル燃え。
・サガークウィップ使ってくれてありがとう!サガの見栄えは好きだったけど、サガを脱ぎ捨てたこと自体は、(業の方の)サガから解き放たれたって感じもしなくもなく。替わりに着てるのが「ダーク」キバなのがあれだが(笑)
・まさかの素手殴り合い!バトルに含めてもいいのか、これ。うん、男は拳と拳で語り合え!無条件で燃える。
・お供ンスターズの名乗り!あれ?モンスター体の名乗りは初めて?真名じゃないけど、本来の名前で音也との約束を叫ばれると、こう、なんていうか、ものすごい勢いで殉じてた感が出るな!

■正夫
 これは…!なんつーかこれはもう!やられたよ!そうきたか!ネオファンガイアってのが何者か、とかその辺はいくらでも妄想するとして(笑)、音也から渡や太牙に受け継がれたものが、更に次世代へも続いて行く、という示唆において、これ以上のオチは無いだろう!また、キャラもいいし。ってか石田&武田頑張りすぎ(笑)


 正夫が「叔父さん」って言ってるところをみると、渡と太牙は普通に親戚づきあいしてるんですな。そしてお母さんにはまるで反応しないところを見ると、列席者の中にはいないって事だろうね。……もしくは、見ても母だと認識してないか、だな。


■ライダーキーック!
 最高!この全員揃ったお祭り感のままディケイドへ突入できるって、ほんと幸せだ!


■記号
 解りやすく終止線。登場人物たちの物語は続いていくけど、「仮面ライダーキバ」という番組はここで終わり。一年間、本当にありがとう!



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