路地裏散歩

特撮とかアニメとか感想と犬。

#19 終わる旅

 あああもう!良かった!ほんと良かった!二転三転して「仲間との協力」を描き、鬼として生きるということの光と闇に目を向けつつ、ピントはアスムとヒビキの師弟にあっていて、「継ぐのは、魂(生き様と言い換えてもいいかもしれない)」!
 もう、いろんなことが良すぎて、それ以上には言葉にならない感じですよ!1回目見たときなんか、正に号泣って感じだったもんね!2回目は少し落ち着いたけど、暗闇の中で無言で頷きあうヒビキとアスムのシーンは、やはり涙なしには見られません。真世界のヒビキは結局最後まで完全には明日夢を手放すことができなかった訳ですが、新世界のヒビキは自らの命の最後にアスムの背中を押した訳で、自分の中で最後に引っかかっていた引っ掛かりを見事に解消してくれた感じ。
 もちろん、真世界と新世界は違う世界だというのは分かっているんだけども、士からユウスケへの「こいつの笑顔は、俺が守る!」といい、真世界を知っているが故のエクスキューズっていうのは、ものすごいカタルシスがあるんだと思った。もちろん、元の世界を知らなくてもおもしろい話だったと思うよ!すっげー良かったよ!


響鬼の世界
 ある意味、前編の感想ですべてを言い尽くしてしまったような気がするんですが。「仲間との協力」を「三流派の対立」→「融和」として、師弟関係を「師から弟子へ受け継ぐもの」という路線できっちりと三師弟分見せてくれた訳ですね。
 響鬼は「ライダーが師弟関係を結ぶ」という、ある意味では「同属殺しの物語」から最も遠い物語な訳ですが、そこを親越え(親殺し)の物語と絡めて、更に「協力し合う同志」という形にまで昇華しえたのは響鬼という世界観だったからこそだと思う。


□音撃道の三流派
 響鬼流の巻物は「車の几を又手にするなり」で「撃」でしたね。今回は海東が三つ揃えたことによって「なぞなぞ」が解かれた訳だけども、それを考えると、今まで斬鬼流、響鬼流、威吹鬼流は三つの巻物を揃えたことがない→連綿と対立の歴史が続いていたってことですよね。元は一つの音撃道で、しかも互いの流派の存在を知っているにも関わらずそれだけの長い期間、和解を考えることなく対立していた裏には何があったのか、ってのを考え出すとおもしろすぎてたまりませんね!なんかあれみたい、バベルの塔のあれ。「互いに言葉を通じることを得ざらしめん」ってやつ。


■師弟
 太鼓師弟を軸に、弦師弟、笛師弟もしっかり魂を受け継ぎ、力を思いを次世代へ繋げた。時間の都合上仕方ないのはあれど、ザンキイブキの弟子に師匠の座を譲ろうと考えた辺りの部分はもう少し突っ込んで欲しかったといえばいえるけどね。そこ以外はものすごく満足。
 アキラの変身もそうだし、まさか笛師弟まで夢のセッションするとは思わなかったし!ああ、そうすると真世界も込みで師弟セッションやってないのは響鬼のとこだけかー。そこは確かにちょっと残念。


□太鼓師弟
 書きたいことの大半は前回書いちゃったんですが(笑)

 鬼の生き方というのがどれだけ凄惨なものか、というのを、身を持って見せてくれたのが新世界のヒビキなんですね。ヒビキだって正しい心を亡くした訳じゃないんだと思う。自分の身体を異形と化すほど鍛え続けたのは、やはり「人を守りたい」という意思の表れだろうし。ただ、どっかで道を踏み違えた。「人を守るため」という意思が「魔化魍を倒すため」という目的にすりかわった時に鬼の力が暴れだしたんだろうね。しかしこの両者は、表出する力としては「魔化魍を倒し続ける」という行為に集約されるはずで、恐らくヒビキ自身も牛鬼と化すまではその道の踏み違えに気づいていなかったんじゃないだろうか、と思う。
 それはとりもなおさず、魔と鬼の境目が非常に曖昧なものだということを表してる。それは魔に引っ張られるのも簡単だけども、鬼の側に踏みとどまるのも想い一つ、ということ。その想いである「アスムの優しさ」を確信できたから、ヒビキは音角をアスムに伝える気になれたんだろうね。これがアスムと向き合い、アスムの優しさという強さを受け止めることができた、ヒビキのある意味での成長だといいな。だからこそ、イメージの中で向かい合って音角を受け渡す師弟の姿に泣かされるわけだけどもね!あああもうもう!


 そして思いっきり妄想ですが、ヒビキが元の世界のもっさりした感じじゃなく、洒落た麻っぽいジャケットを着てたのは「麻+鬼」=「魔」ってことだったのかな〜とかぼんやり思ってみた。


 そしてアスム側から見れば、突然「師匠が魔化魍だ」「師匠から自らの止めをさすのを依頼される」という事実を突きつけられた訳で、そこで響鬼を受け継ぐという決意ができるのは、並大抵の精神力じゃ無理だと思う。もっとも、一度は拒否してるんだけどね。その優しさゆえに響鬼はアスムが鬼足るにふさわしいと確信したわけだけども、実は「鬼と変わってしまう師を止めるという優しさ(厳しさ)」という意味だったんじゃないかな。厳しさこそが優しさという、いかにも父性的な意味合いが隠れてるような気がしますよ。
 さっきも書いたとおり、ヒビキは「人を守りたい(魔化魍を倒したい)」という面ではとても純粋だったんだと思う。バランスが崩れてしまったがゆえに魔に飲み込まれてしまったけども、その根っこの想い…すなわち魂をアスムは受け取って、これから響鬼としてあの世界を守っていくんだろうね。そして響鬼の魂とアスムの優しさが合わさっていれば、アスムは魔に飲み込まれることはないだろうと思う。


■弦師弟、笛師弟
 アキラ、鬼に変じただけでなく、独立まで……!!天鬼ですか。素直に真っ直ぐなアキラらしい鬼名だね。
 イブキザンキも、ある意味でヒビキと同じく道を踏み外しかけていたんだと思う。二人とも音撃道を一つに束ねようとは思っていたけれども、それは自分の勢力に他者を取り込むことによって為すべきことだと思っていたわけだよね。前の方でも書いたとおり、連綿と三流派が対立していたとすると、この考えはある意味で間違ってないんですよ。ザンキイブキの更に上の師匠、更にその上の師匠からずっとそういうものだと教えられてきたんだろうから。
 でもそれは「父(師匠)」を越えられていないんだよね。だからこそ、師匠に背いてでも自分達の信じる「三流派の力をあわせる」と決断した弟子たちは、それだけで一種の父越えを成し遂げたわけだ。そしてそれを認めたからこそ、自分はもう越えられた存在だ、として、師匠たちは弟子に鬼弦と鬼笛を渡すと。
 ザンキさんの「お前はもう師匠だろうが」というセリフが、今度こそ直接の弟子であるトドロキに伝えられてるのが、ぞくぞくしたよ!


■海東
 この話は、もしかしたら「仮面ライダーディケイド」じゃなく、「仮面ライダーディエンド」だったのかもしれない。
 海東が「君の前から通りすがりの仮面ライダーだ」っていうのは、前に「それは僕の仕事だ」と言ってたのと同意なんでしょうね。最近はナマコナマコ言ってませんが(笑)、士の過去を知ってたことに変わりはないはず。元々海東は9つの(もしかしたらもっとたくさんの)世界を回ってて、士とはその旅の途中で出会ったんだったりして。


 今回のラストで夏海の世界のスクリーンが出てきたけど、あの中には1話で炎に巻き込まれかけた親子が描かれてた。すると、他の世界を旅している間は、元の世界の時間の影響は受けないとか、そういうことがあるんじゃないのかな。もしそうなら、たとえば海東が今より若い士の前で「通りすがりの仮面ライダーだ」と名乗ったことがあり、それを士が覚えていたってことになったりもするかも、とか妄想中。


 また、今回の話って、海東の成長物語でもあるんだよね。アギトの世界でも出ていた通り、今までの海東は「感情や思い、生き方という、形の無いものを理解することができない」様子だったんですよね。その意味では、ヒビキの世界のお宝というのは、正に形のないもので、巻物を見て自分の食指が動かなければ、そのまま放っておけば良かったはず。その世界のライダーが何人死のうが、海東にはしったこっちゃないだろうし。
 それが今回に限っては、巻物が音撃道を極めようとする人間以外にはまったくむだなものと解ったあとも、アスムのためになるように動いてる。これはやっぱり海東の成長ではないかな〜と。まあ、まだ「三流派が力を合わせたときに、何がしかの宝が出現する」と勘違いしていたって可能性もないではないけどね。それならもっと悔しがるような素振りを見せても良い筈だし、それはないか。なんていうか、ものすごいツンデレで、ほんと可愛いよね海東。


■バトル
 三種の音撃の合奏が音楽になったよ!!これは、一度は見たかったものを見せてくれた!すっげー良かった!しかも、徐々に音が重なったところへ持ってきて、師匠二人とディエンドの参戦でまたテンションだだ上がりですよ!
 音撃の見せ方も、カットインが入ったり、ソロの演出を凝ったりして色々変化をつけてきてて楽しい。しかし、ディケイドの「薄紅色」は解るとして、ディエンドの「海鼠」……ナマコて……!!(笑)ディエンドがナマコってことですか!(笑)なんなのこの子ー!!もう、もう大爆笑ですよ!!いや、一応、ディエンドのメインカラーのことかと思って色の和名とか調べてみたんだけど、見つからなくてね。どうなんだろうね。


 そして一方で、やっぱり音撃ってのはどうしても攻撃の最中の動きが地味で、やや冗長になるきらいはあるな、と思った。好きだけどね。


■鳴滝、王蛇、そして士
 王蛇、超出オチ!えーそんなー!鳴滝さん、わざわざバケガニ復活させてけしかけてるだけなの?せっかく呼んだんだから王蛇本人に襲わせなくていいの!?ナニがやりたいんだ、この人は。いや、ディケイドを倒したいんでしょうけど、ホントに確実性の低そうなことばっかりしてるね。
 でも、出オチでもカッコよかったよ、王蛇!つーか、あれだけしかない出番でこれだけ強烈な印象を残せるのも、王蛇だからこそ、って気がする。他のライダーじゃ、恐らくこうはいかない。


 今回はアスムをメインにした太鼓師弟話で、そのアスムに絡んだのは海東だったもんで、ほんとにまた士の存在が薄い薄い。次回から士自身、もしくは海東、そして夏海の話になっていく筈なので、今後に超期待中。旅が終わったあと「十度目に立ち上がる」時に、世界と士の関わり方、そして世界そのもののあり方は果たしてどうなってるのか。楽しみですな。


■次回
 音也ー!!しかも武田くんの音也ー!闇のライダーは、ダークキバ、ダークカブト、オーガ、龍牙?ちょ、なにがどうなんの!